下記の図書が、昨年11月に刊行されています。
笠羽晴夫. デジタルアーカイブの構築と運用: ミュージアムから地域振興へ. 東京, 水曜社, 2004, 191p. (ISBN4-88065-139-7)
著者は、デジタルアーカイブ推進協議会<http://www.jdaa.gr.jp/index.htm>の事務局長です。印象に残った点を、以下に引用してみます。
- アーカイブ(archives)とは、公文書・古文書保管所、文庫などのことを指す。ヨーロッパでは中世の寺院、大学などに少なからぬものが見られる。その後行政機関、ミュージアムなど、あるいは個人によってまとまった文書・文化財などが集積された、それらに関する記録・整理の活動を併せて示す言葉として使われている。(p. 14)
- 次の3種類が現状ではデジタルアーカイブと呼べるだろう。①アーカイブのデジタル化(略)②デジタル技術を活用した収蔵物のアーカイブ化(略)③散在する対象物そのもののかわりにそのデジタルデータを対象としてアーカイブとしたもの。(p. 14-15)
- 地域振興のクローズアップに力を発揮するのは、アーカイブではなくデジタルアーカイブである。(p. 17)
- さまざまなデジタルアーカイブが現れ利用されはじめている現在、アーカイブがあまりに難しいものとなりそれを名乗るのに厳しすぎる条件がつくことでアーカイブ全体の広がりが制限されるということは避けたい。バランスが大切と考える。(p. 50)
教科書としての使用を想定しているのか、技術面や商業面に偏らずわかりやすくまとまった本です。
デジタルアーカイブについては、アーカイブということばを浸透させた成果の大きさは高く評価すべきですが、アーカイブズをめぐる従来からの議論をあまり踏まえていない点に反感を覚える人々もいるかもしれません。