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北海道立文書館の事業縮小問題についての要望書

ご提供いただいた情報によれば、昨年の10月11日に、以下のような要望書が提出されました。

北海道立文書館の事業縮小問題についての要望書
 日頃、道政のためご尽力下さっておられます知事に敬意を表します。私たちは北海道を中心に活動している歴史研究者の団体でありますが、標記のことについて書面をもって要望いたします。
 道では、目下の財政危機に対し行政改革によって乗り切ろうとされており、私たちも関心をもって見守っております。しかしながら行政改革の大義名分の下に、百年の大計が必要な文化行政が縮小されることを懸念しております。とくに北海道の文化的・歴史的遺産の継承を担う道立図書館、開拓記念館、道立文書館の業務が縮小、廃止に追い込まれるのではないかと心配されます。文化施設は他の公共事業に比べて、わずかな予算で行われているものです。これらの施設では僅少な予算、規模の縮減も多大な影響が免れません。改革がことさら文化行政のしわ寄せにならないよう願っております。
 なかでも規模の最も小さい文書館について、「平成17年度における組織機構・定員管理等に関する取扱方針」また北海道立文書館運営協議会等に配付された文書によれば、管理運営の民間委託、或いは私文書部門など一部業務の廃止、組織の縮減などが計画されていると聞きます。これらが北海道の文化発展の阻害になることを深く憂慮する者です。
 北海道立文書館は、1985年に設置されてから今年で20年になりますが、その設置にあたっては、道議会の請願の採択、145団体の知事宛要望書など、歴史研究団体のみならず幅広い道民、研究者の要望が提起され、これが反映されて実現した施設です。「北海道立文書館(仮称)設置に関する基本構想」にあるように、文書館は「北海道の学術・文化及び行政の発展に寄与する」目的で、文書資料を収集、保存し広く利用させる公の施設として誕生しました。
 これらの基本的性格、業務は、今後とも堅持し育成されなければなりません。同時に文書館の理念は、日常的に時間をかけて文書等を累積し、整理し、利用に供することによって初めて具体化する息の長い仕事です。昨今、市町村合併を機に、各地で歴史的文書資料保存への関心が高まっていますが、残念ながら、市町村の体制はなお弱体であるのが現状です。文書の保存は現地で行うという、現地保存主義を道立文書館はとっていますが、各地の文書資料の保存の為に同館が果たす指導的役割は益々大きいものがあります。道立文書館業務の一部切り捨てや体制の縮小は、今後設立されようとする札幌市など市町村立文書館の性格に枠をはめることになり、影響は大きいものがあります。昨2004年6月、内閣官房長官の諮問機関は、国立公文書館などの機能をいっそう強化するよう提言しておりますが、その趣旨は地方の文書館にも及ぶものです。
つきましては、私たちは次の点を特に協調して申し上げたいと思います。
1.文書資料を歴史的に保存することは、道民のアイデンティティの確立、道政の歴史的説明責任を果たすために必要です。道の公文書はもとよりですが、私文書も文書館の機能から性急に疎外することなく、いっそうの充実を図っていただきたい、というのが道民の願いです。「公文書館法」第3条(歴史資料を保存する国、地方公共団体の責務)に規定されているように、知事はこのような期待を真摯に受け止め、維持発展させる責務があります。
2.道の文書館が直営によって運営されるべきことは堅持されなければなりませんが、ほかにも業務のいたずらな改変、利用サービスの低下、文書館機能の減退を来さないようにしていただきたい。
3.文書館の改革、改編に当たっては、利用者の要望抜きに道の内部だけの論議によって性急な結論を出すことなく、文書館運営協議会はじめ研究団体、市民団体、利用者の意見を反映すること、さらにまたそれらのニーズに積極的に応えるような体制を維持、発展させ、道民の要求に逆行することがないようしていただきたい。
以上、強く要望し、知事の懸命な判断をお願いします。


   北海道知事 高橋はるみ様
                 2005年10月11日
               北海道史研究協議会
                  会長 田 端  宏
                北海道歴史研究者協議会
                   代表委員 追 塩 千 尋

この件は現在も引き続き要望中とのことです。問い合わせ先は以下のとおりです。

  • 北海道史研究協議会道立文書館問題検討チーム委員 鈴江 英一

    〒007-0836 札幌市東区北36条東23丁目4-8
    Tel (011)781-0859 e-mail suzueei1 at topaz.ocn.ne.jp(atは@に)